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お墓の珍しい効果

その中間くらいの状態が、気分的にも実生活の便利さにおいてもちょうどいいと、私は思う。 私にも何度かそういう経験がある。
一度、酒に酔ってうっかり乗り過ごしたのだが、すでに夜中の十二時を回っており、朝の五時まで待たないと電車がない。 駅には誰もいない。
あたりは住宅地だが、皆、寝静まっていて真っ暗だ。 駅前に出たが、タクシーなどいないのである。
途方に暮れて酔いもさめ、とぼとぼと道路を歩いていたら、深夜営業のガソリンスタンドがあった。 その頃、深夜営業の店はめずらしく、「やれ嬉しい、これこそ天の助け」と思った。
ところが、強盗を警戒してか、店の戸にはしっかり鍵がかかっており、中に入れてくれない。 ガソリンスタンドはセルフサービスになっており、支払いのための小さな窓だけがあいている。
しかたがないから、その窓口に行き、事情を説明して、タクシーを呼んでくれるように必死で頼んだ。 何しろ無事に家に帰り着いて、自分のベッドで眠れるか、朝の五時まで電車を待たなければならないかになる。
店の人は、多少、うさんくさそうな顔をしながら、乗り越したことを懸命に説明する私の話を聞いていた。 しかし、絶対に私を店の中に入れようとはしなかった。

結局、タクシーは呼んでく瀬戸際である。 東京周辺なら二十分や三十分電車に乗っても、にぎやかな街と駅が続くから、乗り間違えてもさほど困ることはないが、ロンドンではもとの駅に帰り着くまで大変な時間を要する。
まして、終電車が出たあとでは、簡単にタクシーはつかまらず、閑散とした無人の駅で立ち往生することはなかった。 しかし、その代わりに、その小さな窓口から、紙切れを渡してくれた。
そこにはタクシー会社の電話番号が書いてあった。 「そのへんの公衆電話でこの番号にかけて、タクシーを呼べ」と言うのである。
私はまたとぼとぼと駅まで戻らなければならなかった。 構内にひとつだけあった公衆電話から、教えられた番号に連絡し、ようやくタクシーに来て貰った。
タクシーに乗るとわずか二十分で自宅に着いた。 方向こそ違うが、私が電車を乗り越して降りた駅は、家からさほど離れてはいなかったのだ。
にもかかわらず、深夜に間違えて見知らぬ駅に降りてしまうと、大変な目に遭う。 このへんの事情は、密集した街の作りになっている日本の住人にはなかなか分かってもらえないだろう。
実際の話、乗り越したり乗り間違えたりして、見知らぬ郊外の駅に降りてしまうと、気温が零下になる真冬の深夜など、うまく対処しなければ生命の危険さえある。

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